もう好きなようにやるわ

Smith, P., & Schuster, M. (2019). Public goods and cheating in microbes. Current Biology, 29(11), R442–R447. https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.03.001

微生物のソーシャルなふるまい

 

Apicella, Coren L., and Joan B. Silk. “The Evolution of Human Cooperation.” Current Biology 29, no. 11 (June 3, 2019): R447–50. https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.03.036.

 人間の協力や利他性の進化。アソートメント

 

Mac】ターミナルの配色設定は「Solarized」がおしゃれで見やすくておすすめ - Reasonable Code. (n.d.). Retrieved June 4, 2019, from https://reasonable-code.com/solarized/

 

猫も杓子も. (1503754048). 比率の差の検定・多重比較. Retrieved June 4, 2019, from 猫も杓子も構造化 website: http://nekomosyakushimo.hatenablog.com/entry/2017/08/26/222728

 

R|ggplot2で棒グラフを描く|hanaori|note. (n.d.). Retrieved June 4, 2019, from note(ノート) website: https://note.mu/hanaori/n/neb063117bab2

 

Barras, C. (2019). Cats know their names — whether they care is another matter. Nature. https://doi.org/10.1038/d41586-019-01067-z

 

Murugan M et al. "Combined Social and Spatial Coding in a Descending Projection from the Prefrontal Cortex" (Cell. 2017 Dec 14;171(7):1663-1677)


みんな元気? しばらく留守にしていましたが、とうとう神経科学の論文にも恐竜がでたぞーって感心したのでお久しぶりの更新です。こんなんが動いて迫ってきたらロボゲーターより怖いやろが。はい、今回お伝えしたいことはそれくらいです。

 *

あっ、ちょっと待って

Danjo T et al. "Spatial representations of self and other in the hippocampus" (Science. 2018 Jan 12;359(6372):213-218)

この図もなかなか味わい深いですね……なんというか、侘びさびがあるというか、滋味にあふれるというか……ていうか2年以上空けた更新がこんな内容で本当にすみません。でも見つけてくれてありがとう、どうあがいてもクソな研究生活、せめて面白おかしくやっていきましょう。2018年もやっていくぞ〜

またおもしろいやつ見つけたらこっそり教えるね。じゃあまた。

Alon Amir et al., "Amygdala Signaling during Foraging in a Hazardous Environment" (JNS, 23 Sep 2015, 35(38))


 ロボゲーター登場。LEGOマインドストームアセンブルされた全長約35センチ、全幅約20センチにもおよぶこの人工的プレデターはタフな車輪で怒りのデスロードを疾駆する。前面には砂嵐のただ中でも鋭敏に反応するセンサーを備え、餌を求めて近づいてきた哀れなネズミに向かい、その獰猛な顎をがっしょんがっしょんいわせて襲いかかるのだ……!*1

 という素敵な論文と出あえたのでお久しぶりの更新です。ロボゲーターいっこほしい。ていうかね、ロボゲーターなんていう、フィニファブのドゥーフェンシュマーツ博士ばりのネーミングがなんかもうたまんないですね。ラットにとってみれば失禁ものでしょうけど。あっ、論文じたいは行動学的にも解剖学的にも電気生理学的にも興味ぶかい、しっかりとしたものですよ! よんでないけど!

D

 てことでまた面白い論文がでたときにお会いしましょう。そんじゃーね。

Sato TK, Häusser M, Carandini M, "Distal connectivity causes summation and division across mouse visual cortex" (Nat Neurosci. 2014 Jan;17(1):30-2)

Abstract
Neurons in different locations across the cortex are connected through polysynaptic networks involving both excitation and inhibition. To probe the functional effect of such networks, we used optogenetic stimulation to trigger antidromic spikes in a local region of primary visual cortex (V1). This local activity had two effects at distal V1 locations: summation and division. The balance between the two depended on visual contrast, and a normalization model precisely captured these effects.

 視覚のこととかよーわからんし読みづらいので一段落ずつなんとか理解してゆきたい……たった3ページだってのに、何やこのエニグマティックな論文は……。

  • 大脳皮質一次視覚野(V1)の神経細胞は隣接する細胞からだけでなく、V1内の水平結合や高次視覚野からのフィードバック結合などを介して、離れた部位からの情報入力を受ける。このような神経ネットワークは複数のシナプスを介し、また興奮性/抑制性の入力が混在するため、全体としての働きはまだよく分かっていなかった。そこで著者らは光遺伝学的手法をもちいてV1内の神経結合の因果性、また神経活動の文脈依存性をしらべた。イントロここまで。
  • 神経活動を確実に局所的に引き起こすため、光遺伝学的逆行性刺激をおこなった。子宮内電気穿孔法を使い、マウス片半球V1の2/3層だけにチャネルロドプシン2(ChR2)遺伝子を発現させた(ここまではPetreanu et al, NN2007とおなじ)。反対側のCallosal neuron(脳梁を通って軸索投射しているニューロン)をレーザー刺激したところ、V1の両眼応答性部位(BZ、binocular zone)において、最初2/3層の細胞で、そのあと5層の細胞で神経放電がみられた。後者はグルタミン酸受容体のブロッカー注入で消失したので、前者が直接刺激された神経細胞だといえる。ここまでまだ準備みたいなもんや。
  • 麻酔下(この後もずっと)でレーザー刺激すると、逆行性刺激されたBZから直接入力をうける単眼性応答部位(MZ、monocular zone)において、BZから遠い部位で遅れて弱い活動がみられる。LFPを測ってみると、この活動は垂直方向の視覚刺激を見せたときより強くシャープだった(視覚刺激ではスパイク発火には至らない)。これって4層の話ってことでいいんだよね? このあとも。
  • 次に視覚刺激(ホワイトノイズ)も同時に行いました(Fig.2)。ちょっと興奮するやつ(Fig.2e)もいたけれど、視覚刺激のコントラストを上げるとどの部位でも抑制がみられ、コントラストが高いほど抑制が大きい傾向があった。単一細胞でみてもその傾向は変わらない。
  • ところで興奮応答はBZ、MZどちらでも見られたのだけれども、抑制応答はMZだけ……特に遠位のMZでよく観察された。つまり抑制応答は視覚刺激によって直接駆動せしめられる部位でのみ起こるのだ。ちなみにレーザーの後、遅れて視覚刺激を行うと、興奮応答しか起こりませんでした(Fig.S7)。なんでこのときはバー刺激?
  • 以上のコントラスト依存的なMZの活動を記述するために伝家の宝刀、カランディニのDivisive normalizationモデルが抜かれます。
  • このモデルがいかに素晴らしいかが語られる。変数pだけでこんなにも!
  • さらにさらに、このモデルはレーザー刺激強度の影響も変数λだけで説明できる。まあ他のモデル出してないのでへえそうですかってなもんですけども。リザルトここまで。
  • 以上の結果をまとめると、遠位からの皮質内神経結合の影響は、感覚刺激の強度依存的であることが、機能性・因果関係のレベルでちゃんとわかりました。具体的には、感覚刺激による影響が小さいときには加算的に、大きいときには除法的に、中くらいのときには両方、単純な標準化モデルで説明できるような影響があらわれる(にほんごむずかしい)。
  • V1内神経連絡の文脈依存性を今までわからなかったレベルで解き明かしましたよ。
  • オプト逆行性刺激というわれわれの手法は画期的であり、特に双方向性の結合に富む領域で力を発揮する。すごいだろう。オプトだから順行性スパイクで鈍ることもないしな。
  • えっへん。

 以上です。みじかい論文は情報が少ないのではなくて、そのぶん圧縮されているので、行間を読むちからというか、前提となる知識がないと、どーにもこーにも歯が立たんのんな……名著をよんで勉強するのん……。

脳と視覚―何をどう見るか (ブレインサイエンス・シリーズ 14)

脳と視覚―何をどう見るか (ブレインサイエンス・シリーズ 14)

 けっこうおもしろいぞ。ていうかね、ネズミには中心窩がない(というか哺乳類でフォビアもってんのは霊長類だけ)とか、視交叉で9割が反対側いくとか、そういうとこから知らなんだからね。

 1950年代末のヒューベル&ウィーゼルから、解剖学的なとこまでいちいち解説してくれててほんと助かる。V1は6層まであってニューロンはそれぞれ興奮性の有棘細胞と無棘細胞、有棘細胞は星状細胞と錐体細胞とがあって前者が入力層である4層に、後者が2/3層に。星状細胞は単純型細胞、錐体細胞は複雑型細胞または超複雑型細胞。無棘細胞は少なくとも19種類あるらしいんだけど、今はもっと増えてんだろうか? まあとにかく役者はたくさんいるってことです。

 LGNからの入力はPチャネル、Mチャネル、Kチャネルとあって、Pチャネルが線・境界・色の情報を4Cβ層に、Mチャネルが動きの情報を4Cα層に、Kチャネルがなんかよくわからん情報(色や形態)を2/3層のブロッブに直接はこびます。他にも入力は前脳基底部(BF)からのアセチルコリン性投射、青斑核からのノルアドレナリン性投射、背側縫線核からのセロトニン性投射なんかもあるのね。ちなみにV1内ではグルタミン酸とGABAで上げたり下げたりしています。いっぽう出力をみてみると、6層からLGNへのフィードバック投射、5層は2/3層から入力を受けて上丘や視床枕に、あと2/3層からV2へいくやつと、4B層からV2、V3、MTへ行くやつがあるようです。簡単に紹介してこんなになので、じっさいもっとあるんだろうなー。

 以上が8章ね。9章ではV1の特徴抽出性として、方位選択性、方向選択性、空間周波数選択性、視差選択性、色選択性についてふれています。方位と方向はちがったのか! OrientationとDirection。後者は運動選択性といったほうが誤解が無いように思えます。そんでそのような選択性を実現する機能的コラム構造の配列について……眼優位性コラム、方位コラム、ブロッブなんかの構造についていろいろと。ほんと、V1理解の進歩は技術の進歩と平行してんのな。電極法からシトクロム染色、2-DC法、放射線アミノ酸による標識法、そして工学計測法……ここにきて佐藤さんのオプトジェネティクスがようやく繋がったかんじですね。やれやれ。

 さて10章にきてようやくV1内ネットワークの話になる。まず水平結合が似たような選択性をもつコラム間をつなぐ……という単純なものでもなくて、興奮性結合と抑制性の結合で、また結合の距離によっても様相がことなり、なんかうまいことやって(忘れた)、刺激文脈依存的な応答をみせているのだ。背景刺激に影響されたりね……まあそれはV1内部だけでやってることではなくて、MTとか高次の視覚野からのフィードバック入力もあるからなんだけど。つまりV1だけ見ててもやっぱり分かった気にならんという。はあ。まあいいや、勉強ここまで!

 あといろいろ参考文献。でもやっぱ本読んだほうがええわ。ネットDE真実よろしくない。

 へえ、マーモセットのV1に眼優位性コラムあるかどうかすら、判るのに2013年まで待たなきゃいけなかったのか。なんでやろ。あとねー、

 この記事けっこうおもしろかったよ。アイ・オブ・ザ・マウス。Cris Niellたちなんて、ヒューベルウィーゼルがネコやサルでやったことをネズミでやっただけ。その点Matteo Carandiniは……というはなし。進化的にはネズミのがネコよりヒトに近いってほんとかな。

 そんなとこかな。そうそう、ヒューベルさんもウィーゼルさんもまだ生きてはるんですね。神経科学なんて、まだひと世代くらいのものなんね。

Watson KK, Platt ML. "Social signals in primate orbitofrontal cortex." (Curr Biol. 2012 Dec 4;22(23):2268-73)

 ジュースを犠牲にしてでもお姉ちゃんのお尻を見たいのは社会的価値に基づいた情報収集です(キリッ、つーかzipでくれ、とOFCの活動もゆっている。おなじタスクでの行動結果が2005年*1、行動時のLIP活動の報告が2008年*2なので、「M2」というサルが同じやつであるならば、7年ちかくメスザルの尻画像を見つづけていることになります。おサルの欲望は底なしやで…!

 *

 まあそんなことよりも、

 えっ、エファプス結合って何ぞ。とおもったのでちょっと調べた。ていうか最新のカンデル本*3でもちょこっとしか出てこなくてがっかりだよ!

 Wikipediaさんによりますと、ギャップジャンクションやタイトジャンクションを介した、非シナプス性の相互情報連絡、格好良くいうとクロストークってことになるのだろうか。うーん、ジンクピリチオン効果*4! 現象自体は19世紀から予想されていたけれど、実験的な報告は1940年のKatz & Schmittまで待たなきゃいけない。命名は1941年にArvanitakiってひとがギリシア語の「ephapsis」("to touch"っちゅ意味)から持ってきたんだって。

 ほいでコッホさんたちが精密に電場電位やLFPを測って、はじめてその効能を報告したと。コッホなんでもやりよるな。

 てことでまだまだ未知のメカニズムでもって神経活動は制御されてるかも知れないし、グリア細胞の働きを調べたら意識がわかるかもだし*5ポラリトンなんかを想定した量子力学モデルで神経伝導はもっとよく説明できるかもっていう人もいて、なんていうか、風呂敷は大きく広げた方がたのしいよねーって話しでした。

Salamone & Correa "The Mysterious Motivational Functions of Mesolimbic Dopamine" (Neuron, 2012)


 おれたちのメカラットが帰ってきたッ! JNSのときとまったくおなじ絵だけれども、これがほんまのサイバーローデントや! と興奮したのでお久しぶりの更新です。今年二回目か……なんか広告ついちゃってうざったいなー。レビューなんか読みますよ。

 側坐核で放出されるドーパミンのはたらきについてまとめた論文。わー心理のひと〜ってかんじです。

    • Mesolimbic DA and Motivation: The Changing Theoretical Landscape

 人間って神話の時代から、ばらばらの出来事を適当にむすびつけて、都合のいいお話しをつくるのが得意ですよね、ドパミンに関してもそんなふうに考えていた時期が私たちにもありました……RewardだとかAnhedoniaだとか、耳触りの良い惹句についつい飛びついちゃったんです……という反省から始まって、けどまあこの十年でけっこうちゃんと腑分けされてきましたね、という。Habit formationにHedoniaにAddiction、ことばの意味もちゃんと定義しとかなきゃなんない。

    • Motivetional Processes: Historical and Conceptual Backgroung

 まだあんましドパミン関係ないけれども、とりあえずモチベーションって何や、と言葉の問題から入っていくのはなかなか良いです。まずはショーペンハウアーの定義から。

"choose, seize, and even seek out the means of satisfaction" (Schopenhauer, 1999)

"the process of arousing actions, sustaining the activity in progress and regulating the pattern of activity" (Young, 1961)

"the set of processes through which organisms regulate the probability, proximity and availability of stimuli" (Salamone, 1992)

"the behaviorally-relevant processes that enable organisms to regulate both their external and internal environment" (Salamone, 2010)

 まあいろいろ。行動心理のひとが多いってのもあるけれど、行動と密接に関係するものなのね。満足や快適を得るために、なにかに向かい(あるいは逆に離れ)、目的達成までその状態を制御すること。で、そのために時間的、物理的コストを乗り越えなきゃいけない。関連用語というかいろいろ言い換えることができて、それが表にまとめてあります。

Appetitive vs Consummatory (Craig, 1918), Preparatory (Blackburn et al, 1989), Anticipatory (Ikemoto and Panksepp, 1996), Instrumental (Salamone, 1992), Seeking and Taking (Foltin, 2001; Czachowski et al, 2002), Activational vs Directional (Cofer & Appley, 1964; Salamone, 1988), Wanting vs Liking (Berridge, 1996, 2007)

 はあ、多すぎ……WantingとLikingくらいしか知らへんだわ。TakingとSeeking、ActivationalとDirectionalのちがいは重要っぽい。なにがちがうのかさっぱりわからんけど。←SeekingはInstrumental phase、つまりApproachingとかで、こちらが側坐核ドパミン依存、TakingはCunsummatory phaseでAppetiteとかPreference、こちらはドパミン関係なし。次の章でくわしくやります。

 んで、いちばんおもしろかったのが、‘Motivation'も‘Movement'も、おなじラテン語‘Movere'由来だってこと*1。なんかが動くっていう意味で、「外へ」を表す接頭語‘e-'をくっつけると‘Emotion'になる。感情を外側へ動かすってことね。前にうごけばPromote、元の状態にうごかすことがRemove。おおお。

    • Dissociative Nature of the Effects of Interfering with Nucleus Accumbens DA Transmission

 ことばの話しはまだつづく。次はRewardについてです。ひとによってReinforcerであったりPrimary motivationであったりAppetite、Pleasure、はたまたHedonia……いろいろ意味がありすぎて逆に無意味になってるね、だいたい側坐核ドパミン系をReward systemとかゆっちゃうと、Aversive motivationが過小評価されちゃうし。あかんで。

 てことでことばの話しはここまでで、以降は具体的にAccumbens DAの働きについてつらつらと。とはいえまとめ以上のものではないですね。Fig. 1にまとめられているように、Instrumental phaseであってConsummatory phaseでない、つまり、側坐核ドパミンを減らしたりブロックしたりしても、飲んだり食べたりする量は変わらんし嗜好もおなじ、そのかわりBehavioral activation……英語のままで並べますけど、exertion of effort, Pavlovian to instrumental transfer, flexible approach behavior, energy expenditure and regulation, exploitation of reward learningなんかに効く。具体的には、大報酬のためにレバーを何度も押したり(FR1のときは意味なし)、Tメイズで坂道があっても大報酬のほうをえらんだりするのに働いているらしいです。嗜好性や摂取量なんかに影響するのはフェンフルラミン(SSRI)やカンナビノイド系。ただし、物理的コストはいいとして、時間的コストのからむ実験ではまだ結果があいまいらしい。それにしてもアンフェタミンハロペリドールなんかの薬物はもちろん、受容体ノックダウンとかいろいろとドパミンをコントロールするやり方はいろいろあるもんだなあ、と改めて。

    • Involvement of Mesolimbic DA in Appetitive Motivation: Dynamic Activity of DA Systems

とまあコントロールする方法はいろいろあるけど、何をコントロールしているの? てのがよく分からんわけです。受容体はD1、D2、いろいろあるし、ドパミンの発火もPhasicな成分とTonicな成分があって、それぞれ別の働きをしているはずなんだし。そのへんも最近だんだんわかってきました。古くは80年代から(Nishio et al, 1987)、たくさんの人が電気生理やらボルタメトリーやらマイクロダイアリシスやらc-Fos・DARPP-32発現やらで様々な時間・空間分解能でドパミン活動を見てきたわけで、最近の光遺伝学の成果も含めて、知識は積み上がっているのよ。だいたい皆さん知ってるでしょうから省略するけど(強化学習なんかさらっと触れる程度なのがすばらしい)、ここ数年の知見だと、線条体のコリン作動性介在細胞とのPhasicな同時発火で、ニコチン受容体依存的にドパミン放出が調節されるってことなんかがわかってきてる(Rice et al, 2011; Threlfell et al, 2012; Surmeier & Graybiel, 2012)。あとSegovia et al (2011, 2012)とGrieder et al (2012)の話しはよくわかんなかったので、原典をあたること。はい次。

    • Involvement of Mesolimbic and Neostriatal Mechanisms in Appetitive Instrumental Learning

 えっ、また概念の話題ですか。ホメオスタシスやアロスタシス、エモーションやコグニション、ラーニング・レインフォースメント・センセーションやモーターファンクションにモチベーションはどう関わるのでしょうか……なんか、いろいろゆってるわりにはぜんぜんまとまる気配がないぞ……。この節ではオペラント反応とドパミンを扱います。ますが、なんかあんまし関係なさそう……リージョンしてもreinforcer devaluationにもcontingency degradationにも影響ないっぽいし(そっちはDorsomedial neostriatumだっていう。Yin et al, 2005)。オプトジェネティクスでVTAのドパミン細胞を興奮させると、それ自身はレバー押しの強化子たり得たり摂食量を増やしたりはしないけれども、ペレットがもらえるレバー押しを増やしたりする?(Adamantidis et al, 2011) へ? ちょっとよくわかんなくなってきましたが、とにかく行動そのものにはクリティカルに効いてこないってことでいいのかな。

    • Involvement of Mesolimbic DA in Aversive Motivation and Learning: Dynamic Activity of DA Systems

 ようやくAversiveのトピックです。ドパミンっちゅと報酬のことばかり取り沙汰されがちだけれども、むかしから、電気ショックやしっぽつまみ、拘束ストレス、嫌悪予告刺激、嫌悪薬、競争での敗北なんかでドパミンが放出されるっていうのはマイクロダイアリシス実験で確かめられてるし、電気生理実験でもそれを支持する報告がある(ただし、すべてのドパミン細胞が同様の活動をするわけじゃないことに注意)。行動表現にかんしても、Aversive motivated behavior……Avoidance, Place aversion, Taste aversion, Fear conditioningなどがドパミンで制御されているっぽいし、ヒトであっても、PTSDなんかには関係ありそうですねえ、fMRI実験でだって、電気ショックや熱刺激を与えたときと、金銭的損失があったときで、同じように腹側線条体が光ってる。まあなんかあるんでしょうね。てかこれで終わりなんですかね……って、うわ、サマリー長。

    • Summary and Conclusions

 まとめです。Fig. 2に示されているように、側坐核ドパミンは、Low effortよりHigh effort、CunsummarotyよりInstrumental、USよりCSの処理に影響する(それらの軸は独立してはいないだろうけど)。繰り返しになりますけども、強く影響するのはBehavioral activation, Exertion of effort, Cue instigated approach, Event prediction, Pavlovian processes (Pavlovian approach & Pavlovian to instrumental transfer), aversive motivationで、あまり関係なさそうなのがHedonic reactivity to taste, Primary food motivation, Appetite, Association between the instrumental action and the reinforcing outcome、などなどなど。あっ、"tap into the functions〜 "っていいまわしが格好いいのでパクりたい。あとは背側線条体とのちがいとか。あっちもチャンキングでHabit形成で、とまたいろいろあってめんどうくさい。

 まあなんだ、結論としては、ゴールやPrimary motivational stimuliまでの心理学的距離(物理的距離、時間、確率、労働)を乗り越えるための、辺縁系から運動系へのGatingっちゅかThresholdingっちゅかFilteringっちゅかAmplifierっちゅか、そういうもんなのでしょうねっていう。こういうのがイントロでゆってた牽強付会じゃないって可能性もなくはないけど。

    • Translational and Clinical Implications

 おまけで、ヒトのfMRI実験なんかの結果ともよく合致しますねってのと、神経疾患なんかのことをすこし。Hyperarousal, Irritability, Fatigue, Apathy, Anergia, Avolition, Infectious or Inflammatory diseaseとかね。はいおわり。あんまりかしこくなった気がしませんね!

 *

 引用されてるけど、AversiveはNAcじゃなくてMPCにいってるって話しじゃないの。

 *

 Core / Shellの区別以上に、側坐核の細胞にもいろいろあるんだろうなーっていう。

 *

 それにドパミンだけじゃなく、皮質や海馬、扁桃体なんかからのグルタミン酸性入力もあるのだし。ところで筆頭著者のひと、ジョナサン・ブリットって名前が格好いいですね。

 *

 そんで今んとこいちばん新しい報告がこちらになります。ほら、アブスト読んでみても、そもそも課題がめんどくさいし、結論だって"NAc DA encodes integrated signals about reward rates, uncertainty, and choice, reflecting implementation of decision policies."とかゆっててワケわかんないでしょう。そりゃまとめたくなるわなー。

Azzi et al. "Modulation of value representation by social context in the primate orbitofrontal cortex" (PNAS, 2012)

 今年もよろしくお願いします。

 このところ興隆著しい光遺伝学(オプトジェネティクス)(去年はマウスにレッドブルやクリームソーダ、コカコーラを飲ませたりしてた仕事もありましたね)に加えて、霊長類をもちいたシステム神経科学の今後十年をうらなうかもしれない研究分野として、ソーシャルニューロサイエンス、自己と他者の関係をはらんだ神経活動の研究があげられます。もっとも、今年のセンター試験国語に出た厨二病ぽい評論によれば、自己と他者のあいだにはそう簡単に線を引けないのかもしれないけれど……まあ、とりあえず、従来の実験室環境のような、狭くて暗い部屋にサル一頭閉じ込めてやってるだけじゃ見えないものもあるってこと。それじゃ詳しくみていきましょう。

 *

 似たようなことやってのがプラットさん。

 Primate Neuroethology

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 おまけ。

  • OASIS
    "A dyadic fMRI study of direct interactions between two brains"